入社して最初の春のことです。
お客さんが「ロータリー掛けたいんだけど、今頼める?」と来店されました。私はしばらくぽかんとしてしまいました。
ロータリー掛け……?
ロータリー電話じゃないよな、と思いながら、整備士さんのそばに行って小声で「ロータリーって何ですか?」と聞いたのを覚えています。農機具屋に来て早々、知らない言葉が飛び交う世界に放り込まれた瞬間でした。
ロータリーとは何か
整備士さんに教えてもらって初めて知ったのですが、ロータリーとはトラクターの後部に装着する耕耘(こううん)アタッチメントのことです。
回転する爪(刃)が土に入り込んで、田んぼや畑の土を砕いて耕します。「ロータリー掛け」=「トラクターにロータリーをつけて土を耕す作業」のこと。農家さんには当たり前すぎる日常語なんですよね。私がぽかんとしていただけで。
実際の作業を初めて見た日
後日、整備士さんが試運転を兼ねてロータリーを動かすところを見せてくれました。
トラクターがゆっくり進むと、後ろでロータリーがガシャガシャと回転して、みるみるうちに土が砕かれていきます。整然とした土の波が広がっていく様子が、なんだかとても気持ちよくて、ずっと眺めていられました。
「あの爪、全部折れたら全部交換ですか?」と聞いたら「1本ずつ交換できるよ」と教えてもらいました。消耗品なんだ、と学んだのもこのときです。
農機具屋の言葉、少しずつ覚えていく
ロータリー以外にも、農機具屋には独特の言葉がたくさんあります。
- 代かき(しろかき):田植え前に田んぼの土をならす作業
- アワーメーター:エンジンの稼働時間を計るメーター
- グリスニップル:グリスを注入するための小さな部品
- ピットマンアーム:草刈り機などに使われる往復動装置の部品
最初はぜんぶ謎でした。今でもたまに「それ何ですか?」と聞くことがあります。でも最近は、知らない言葉に出会うたびに「また一つ覚えられる」とちょっとうれしくなってきました。
農機具屋は、思ったより深い
事務の仕事をしながら農機具のことを少しずつ覚えていくうちに、農業の季節と農機具が密接につながっていることがわかってきました。春は田植え機、夏は草刈り機、秋はコンバイン。農家さんのサイクルと農機具屋のサイクルが重なっています。
農機具って機械としての構造も面白いし、農家さんの生活と深く結びついているのも面白い。事務員として来たはずが、気づいたら農機具のことが好きになっていました。
このブログについて
このブログは、そんな「農機具屋の事務員目線」でちょこちょこ書いています。
農家さんにとっては当たり前のことでも、私には発見だったりする。整備士さんに教えてもらったことを、農機具を知らない人にもわかる言葉でお伝えできたら——そんな気持ちで書いています。
農機具のメンテナンスのことから、農機具屋の日常まで。のんびり読んでいただけたら嬉しいです。
Q. ロータリー以外にも覚えるのが大変だった言葉はありますか?
A. たくさんあります。「代かき」「畦(あぜ)」「PTO」など、最初は聞くたびに調べていました。
Q. 今ではどんな言葉でも分かるようになりましたか?
A. まだまだ知らない言葉に出会います。それでも以前より確実に理解が深まってきたと感じています。
Q. 新人の事務員さんにアドバイスするとしたら何ですか?
A. 分からないことは分からないと素直に聞くことです。整備士さんも農家さんも、丁寧に教えてくださる方ばかりでした。
知らないことを知らないと言えることが、この仕事を続けていく上で一番大切なことだったと今では思います。
入社したての頃は「ロータリー」も知らない状態からのスタートでしたが、整備士さんに一つずつ教えてもらいながら、農機具と農業の季節が密接につながっていることが分かってきました。分からないことを素直に聞くことが、この仕事を続けるうえで一番大切だと感じています。
実際に動くところを見せてもらって、言葉だけでは分からなかった感覚が少しつかめた気がします。私もまだまだ事務見習いですが、こうした発見をこれからも大事にしたいです。

