「これ、タイヤじゃないんですか?」整備中の管理機を見て、思わずそう聞いてしまいました。
整備中の管理機をのぞいていたら、見慣れないタイプの車輪が付いていました。ゴムタイヤではなく、鋭い爪のような突起がついた金属製の車輪。「これは何ですか?」と聞くと、「鉄車輪」という部品だと教えてもらいました。
鉄車輪という選択肢
なぜゴムタイヤではなく鉄なのか
整備士さんいわく「水を含んでやわらかくなった田んぼでは、ゴムタイヤだと空転して前に進みにくくなることがある。鉄車輪の爪が土に食い込むことで、しっかりグリップして進める」とのことでした。ぬかるみに強いという点は、以前ご紹介したクローラ型の管理機と似た発想です。
特に代かき後のやわらかい田んぼや、雨が続いたあとのぬかるんだほ場では、ゴムタイヤだと機体が沈んでしまい、そこから動けなくなることもあるそうです。そうした場面でこそ、鉄車輪の出番になるといいます。
鉄車輪はクローラよりも単純な構造で、部品点数が少ない分、壊れにくく整備もしやすいのが特徴だといいます。ただしクローラほどの接地面積はないため、極端に柔らかい場所ではクローラ型に軍配が上がることもあるそうです。
鉄車輪の構造と使いどころ
写真で見る、爪の形
写真のように、鉄車輪には放射状に爪が並んでいます。この爪が土に突き刺さるようにして進むため、通常のタイヤの溝(トレッド)とは仕組みがまったく違います。整備士さんは「爪の形や大きさは機種によって色々あるが、基本的な役割はどれも同じ。土をしっかりつかむこと」と説明してくれました。爪の間隔が広いタイプ、細かく並んだタイプなど、土質や作業内容に合わせて選ばれることもあるそうです。
ゴムタイヤと違って空気圧を気にする必要がないのも、鉄車輪ならではの特徴です。パンクの心配がなく、シーズンオフに放置していても劣化しにくいという意外なメリットもあるといいます。金属なので経年劣化そのものはしますが、ゴムのようにひび割れて突然使えなくなるということは少ないそうです。

使う場面が限られる、専用パーツ
鉄車輪は便利な反面、舗装された道路の走行には向いていません。爪が路面を傷つけてしまうため、田んぼや畑までの移動は別の車輪やクローラに履き替えるか、慎重に運ぶ必要があるそうです。
用途に応じて車輪を履き替える農家さんもいるとのことで、シーズンや作業内容によって最適な足まわりを選ぶのも、農機具ならではの工夫だと感じました。
整備士さんいわく「乗用車のスタッドレスタイヤの履き替えと考え方は近い。季節や路面状況に合わせて道具を変えるという発想は、農機具も同じ」とのこと。言われてみれば、たしかに似た工夫だと納得しました。こうした専用パーツが用意されていること自体、農機具が現場の悩みに合わせて発展してきた証だと感じます。
交換を考えるときは
交換や取り付けは農機具屋に相談を
鉄車輪への交換や取り付けは、機体の型式に合ったサイズを選ぶ必要があるため、個人で判断するより農機具屋に相談するのが確実です。ぬかるみでの走行に困っている場合は、こうした専用パーツが解決策になることもあります。
「毎年同じ場所で車輪が空転して困っている」という場合は、一度相談してみると解決の糸口が見つかるかもしれません。田んぼの土質や作業のタイミングによっても最適な選択は変わってくるので、実際の畑の状況を伝えながら相談するのがおすすめです。
鉄車輪はゴムタイヤの代わりに使う、爪付きの金属車輪です。ぬかるんだ田んぼでも土をしっかりつかんで走行でき、クローラよりシンプルな構造で整備しやすいのが特徴。ただし舗装路には不向きなため、用途に応じた履き替えが必要です。
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