農機具屋の事務員をしていると、ときどきこんなことがあります。修理に来たお客さんが帰り際に、「これ、持ってけ」と言って、袋いっぱいの野菜を置いていってくれるのです。
農家さんのおすそ分け文化
農機具屋のお客さんは、当然ながら農家さんが多い。そのため、季節の野菜や果物をいただく機会が年間を通じてあります。春はタケノコ、初夏はスナップエンドウやソラマメ、夏はトマトやキュウリ、秋はサツマイモや栗——。「作りすぎた」「余ったから」と言って、気前よく分けてくれます。
都会で暮らしていた頃には、こんなに頻繁に「もらいもの」で食卓が回ることなんてありませんでした。スーパーで買うのが当たり前だった野菜が、ここでは人から人へ手渡しでやってくる。それがこの土地の当たり前なのだと、働きながら少しずつ知っていきました。
「いや、もらいすぎですって」
袋の大きさにびっくりすることもあります。レジ袋に山盛りのトマト、段ボール箱ごとのキャベツ。「これ全部ですか?」と聞くと、「食べ切れないから」とあっけらかんと言われる。農家さんにとっては自分で育てた野菜なので、分けることへの感覚が、買って食べる私たちとは少し違うのかもしれません。
遠慮して断ろうとすると、かえって「いいから持ってけって」と押し切られる。その距離の詰め方が、なんだか温かくて、最初は戸惑いながらも、今ではありがたく頂戴しています。

野菜と一緒にもらえるもの
おすそ分けの野菜と一緒に、農家さんの季節の話もついてきます。「今年は梅雨が長かったからキュウリが少なかった」「このトマト、品種を替えたら甘くなった」——農機具の点検を待ちながら、そんな話を聞かせてくれます。
農機具屋に来る理由は修理だけれど、ついでに少し話を聞いてもらいたい、という気持ちもあるのかなと感じるときがあります。一人で広い畑と向き合う仕事だからこそ、人と言葉を交わす時間が貴重なのかもしれません。
事務員として思うこと
農機具屋に来て一番驚いたのは、お客さんとの距離の近さでした。名前を覚えてもらって、農地の状況を話してもらって、野菜をもらって。事務の仕事は伝票や電話が中心ですが、その合間にこうした人とのやり取りがあることが、この仕事の何よりの楽しさだと感じています。
「今年もお世話になりました」と言ってくれるお客さんがいると、こちらも一年間ここで働いてよかったなと思います。今日もデスクの脇に、いただいたゴーヤが並んでいます。夜ご飯は、ゴーヤチャンプルにしようかな。
Q. おすそ分けでよくいただく野菜は何ですか?
A. 季節によって様々です。春はタケノコ、夏はトマトやキュウリ、秋はサツマイモや栗など、その時期に畑で採れるものをいただくことが多いです。
Q. お礼はどうしていますか?
A. 決まった形はありませんが、次に来店されたときにお礼を伝えたり、修理を丁寧に対応させていただくことで感謝の気持ちを返すようにしています。
Q. いただいた野菜はどうやって食べていますか?
A. 事務所でみんなで分け合ったり、そのまま家に持ち帰って調理したりしています。新鮮なうちに食べきれるよう、もらった日のうちに調理することが多いです。
こうした季節のやりとりも、この土地で農機具屋をしているからこそ味わえる楽しみのひとつだと感じています。
農機具屋には、修理や点検で来店した農家さんから季節の野菜や果物をいただく「おすそ分け文化」があります。都会暮らしでは味わえなかった、人から人へ手渡しされる温かさを、この仕事を通して知ることができました。
こうしたやりとりの積み重ねが、農家さんとの信頼関係にもつながっていると感じています。
旬のものをおすそ分けしてもらうたび、農家さんとの距離の近さをありがたく感じます。私もまだまだ事務見習いですが、こうした時間も大切にしていきたいです。

